2020年06月14日

2020年6月14日(日)「入口と出口」

5ヶ月ぶりに髪を切る。
スパイラルパーマを希望したが、前回のブリーチにより髪が痛むとのことで、暫く伸ばしてから改めることにして、カットとカラーを入れ直してもらう。「マルサの女」宮本信子演じる板倉亮子を意識したものの、完成した髪型は何処からどう見ても田嶋陽子。まぁ、いい。髪型ひとつで気丈にもしおらしくも振る舞えるくらいには軽い性格でもある故、暫くお喋りは語気強めでいこうと思う。

琉球ガラスで出来たコップに大きな罅を入れてしまう。19歳の頃、沖縄旅行に行きじっくり選んで購入した。
とても気に入っていたし、愛着もあったので自分でも驚くほどショックだった。一服しながらコップを手に持ち、付随する思い出に頭を巡らすうちに「ありがとさん」と声に出していた。新聞紙で丁寧に包み透明のビニール袋に入れた。
器やグラスにも一々思い出がある。そのもの自体に宿っているのではなく、身体の記憶の先、「触れる」と形が在り「撫でる」と手触りが在り、両手で「包む」と温もりが在る。指先や掌が感じる「物」を介した記憶に、どうしても執着してしまう。


先週、トクマルシューゴさんが運営するレーベル「トノフォン」の配信フェスを一日中観ていた。コロナ禍でライブが全く出来なくなってからというもの、友人知人の配信ライブを観たり、自分でも数回行ってみたりした。「あまり、好きじゃないな」というのが私の結論だった。好きじゃない理由がイマイチわからないまま、ただ、好きじゃないと思っていた。結果、演奏はしたいがライブはもう暫く自分はやらないなと高を括り、出口のない作業に没頭することにしていた。
それが一変した。トノフォン配信フェスを観ながらトクマルさんの「Rum hee」という曲が演奏され、カメラワークにより、在宅で演奏している多くの演者がひとつの画面にコンプリートされる様を観て、感動していた。ヘッドフォンから流れる全ての音も豊かに響いてきて鳥肌が立った。
その後、演者の方々の演奏を観るに連れ、何故トノフォンフェスの配信だけは違和感がなく観れるのか考えていた。
酒をチビチビ啜っていると、開けていた窓から大きい風が一瞬身体を撫でた。ふと「身体の記憶」が蘇る。そうか、私が今観ている中で演奏される曲や、映像に映る人達の音楽に最初に触れた時の場所、即ちライブハウスだったり、野外会場の空気、人の集まる場所の匂い、雰囲気、身体で感じる低音など、身体が覚えている記憶が映像を見るうちに自然に補強されていると思った。体感として既に知っている、何度も味わってきた「あの感じ」が思い出されたことが大きいのかもしれないと思った。どの(配信)ライブを観ても、必ずそうなるわけではなかった。とすると、自分が経験したことのある場所や物事での記憶じゃないとダメなのかと思う。いや、配信でも充分に楽しめるけれど、人が発する空気の振動、緊張、間合いが、配信中に起こる回線不良による途切れに伴い、不意に遮断される集中力が「無機質なものの介在によるもの」と理解した途端何か「冷める」感じがあった。タイムラグひとつでも、人間の放つノイズとも、間合いとも異なる、機械の事故。機材トラブルなんて現場でもよく見かける事象だったけれど、其処にはピンと張り詰めた空気が漂っていたし、それさえも演奏の「味付け」として加えていける演者のパフォーマンスに一喜一憂していた。空気が作り出す全てを肌で感じていた。配信で同じことが起こっても何故かアタフタとする場面しか今の所観ない。それも冷める要因だったのかもしれない。それさえも楽しめれば、配信でのライブも、自分の中で身体の記憶として今後、残っていくのかなどと考えていた。
という話を月曜日、馴染みの店で、馴染みの人に話したところ頷くでもなく、遇らうでもなく聞いてくれた。
正直な反応で酒が進む。だって、誰にもまだわからないことだらけ。入口と出口はいつも、何事も自分で意識できる。コントロールできる。
けれど、その間のことはいつも自分だけでどうにもならないことばかり。
ライブはもう暫くできない、やらないと思っていましたが、8月末に私はひとまず、慣れ親しんだ現場で再開しようと思っています。詳細は後日。
再び、入口を意識した。さてどうなることやら。出口までの時間をどう生きていくのでしょうか。無我夢中という言葉を考えた人、凄いな。


追記
これは自分の問題ですが、映像として観ているのか、ライブ配信として観ているのかによっても、(カメラワークなどもある)受け取り方って変わるのね。と、今NRQの配信ライブを観ながら思いました。
posted by 見汐麻衣 at 14:42| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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