2015年07月15日

よみたくなる顔。

6月のひと月、一切のやる気を失って毎晩お酒を呑みにでかけていました。
色んな方を呼び出しては話をきいてもらうでもなくただ私の下衆な会話に付き合わせ、思い出すと「ぎゃぁぁぁぁ......!!!!!!!!!」と叫びながら座布団のカバーを歯で噛んで振り回したくなります。

6月某日
西新宿の居酒屋にて、葱ぬたを瓶ビールを注文。
カウンターに座り右を見ると吽形(うんぎょう)のような爺さま(70代)、左を見ると阿形(あぎょう)のような大爺さま(80代後半)という、両隣に金剛力士像のような顔をした老人二人がいたので「うそぉみたぁい......。」と思い笑いを堪える。
注文した葱ぬたがテーブルに運ばれてきたので箸をつけようとしたそのとき、左隣の阿形が私の頼んだ葱ぬたを自分の箸ですくい食べた。「!?」と思い「すいません、それ今私が頼んだやつです......。」と言うと「知っている。」と返ってきた。「いや......、あの、私が頼んだんです......。」「知っていると言っているだろう。」「あ、じゃぁこれ差し上げます。別の頼むので。」「いや、一口でいい。」「はぁ......。」
という理不尽なやりとりをした直後右にいた吽形が「このひと、面白い爺さんでしょ?」と小声で言う。
吽形に「ビックリするよね、ほんとねぇ。」と、何故か諭されそのままこの金剛力士像(のような二人)と話をすることになり、話を聞いていると1960年代から現役を引退するまで、阿形は某放送局に勤め、吽形は漫画の編集者だったらしく、興味深い話ばかりで面白かったので葱ぬたのことなどすっかり忘れ、楽しい時間だったのだが、会話も落ち着いて先に店を出ようかとした時、阿形に「あんた、歌唄ってるの?」と言われ驚く。自分のことは一切話さなかったのに何故わかるのかと驚いて聞いてみると「そんな顔してるじゃない。でもあんたあれね、ぜ〜んぶ未完成ね。」という答が返ってきてたじろぐ。「どういう意味ですか?」と聞くと「そのままよ、言葉の意味そのまま。ま、私もこの年になったって未完成だけどもね、あなたはそうであることに甘えている感じね。」と言われ、その真意はその場では全く判らなかったけれど、何故か腑に落ちてしばらく黙っていた。
「まぁ、いいんじゃないの。赤の他人がさ、よんでみたくなるような顔してるってことだからね、いいこことだと思いなさいよ。」と言われ、阿形がわざと食べた葱ぬたを凝視してその日は帰った。
後日、気になってまた同じ店に向かった。吽形も阿形もいなかったのでしばらく待ってみたが現れず。
お会計を済まそうとしたら「お代、頂いてます。」と言われ「え?」と言うと「先日隣にいらしゃった〇〇さんと〇〇さんが、あの子もしまた来たらこれで払っといてということだったので。」と言うことだった。「あの、いつもこういうことされるんですか?」と聞くと「いや、あのときね、あなたが店に入ってきたとき、ふたりとも並んで座っていたのにいっこ席空けたのよ。そこにあなたが座ったの。」「私、なんかあの、遊ばれてたんでしょうか......。」「いやいや、そういうことする人達じゃないよ。いつも黙って呑んでるしね。こちらもビックリしたよ。なんだろうねぇ。」阿形、吽形の爺さま二人にお礼を言いたいのだがあれからお店にも行っていないし、会っていない。



【関連する記事】
posted by 見汐麻衣 at 17:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック