2015年03月22日

この世は不思議。

電車に乗ると人様の足元ばかりみている。
正確に言うと靴。乗客の靴ばかり見る癖がある。

今朝。
携帯電話を忘れて外出した。「しまった......。」と思ったが少しホッとしている自分もいた。電車の中、メールの返信や今作っている曲のデモも聴いたりしつつ、ギターどうしよう......難しい......あぁ......うんぬんかんぬん、個人練習スタジオの予約うんぬんかんぬん。メモ機能にやるべきことを打ち込んだりと時間を有効利用しようと忙しい。でも今日はそれもできない。できぬならと、持ち歩いている文庫本を読みふける。途中、ページを閉じ、目の前に立っている人の靴に目をやった。スエード地の真っ青なハイヒール。「あぁ、奇麗だな。こういうの一足欲しいな。」と思いながら、これを履くなら一度しか着ていない一張羅をクリーニングに出して...春になったらどこそこに行きたい...などと皮算用をしつつ、どんな人が履いているのか顔が見たいと思うも、あまりに至近距離ゆえ諦めた。その人は私が降りる駅の一つ手前で降りた。

夕方。
渋谷の東急プラザへ。今日で閉館だった。
最後にどうしても行っておこうと2階にある喫茶店へ向かった。埋火の活動時、ここで歌詞を書いたりもした。CDを発売してもらっているP-VINEが渋谷にあるので、打ち合わせ等でもよく訪れた。人が少なく、なにより喫煙席が窓際に面してある。ゆったりした空間もよかった。歩道橋を歩く人達と同じ目線の高さで、道行く人と時々目があったりする。窓に映る風景はシネマスコープで観る群像劇映画のオープニングのような場面に見える。スクリーンの中にいる人がこちらを見ながら至近距離で過ぎて行く妙な感覚。それも気に入っていた。
今日は閉館日とあって、どこから湧いてきたのかと言う程の込み具合で、帰ろうかと心が折れそうになったが順番待ちをして店内に入った。(順番を待つという行為は人生で2度目だった。一番嫌いなものをがんばって耐えた。)
珈琲を頼んで、本の続きを読んでいた。しばらくして「すいません。」と店員に声をかけられた。「大変申し訳ないのですが......相席構いませんでしょうか?」混雑している状況は見てとれたし、然程気にもならないので「構いません。」と答えた。女性が斜め向かいに座った。軽く会釈だけして私は本を読み続けていた。
「あの...すいません」ふいに声をかけられた。「はい?」と答えると「今朝、○○線の電車に乗っていませんでしたか?」と言われたので「はい、乗っていました。」と言うと、「そのコート見た気がして。それからその本、膝に乗せていたの憶えていて、私も今読んでいるんです。」とかえってきた。はっ!として足下をみた。奇麗だなと思って見ていたスエード地の青いハイヒールがあった。
女性は電車に乗って私の目の前に立ち、本を読もうと鞄からだそうとした際、視線に入った女性の膝に同じ本があることに気づき、なんだかばつが悪くなり読むのをやめたと笑いながら話してくれた。私も女性が履いていた青いハイヒールをずっとみながら色々考えごとをしていたんだと伝えた。「今日、既に会ってたんですね。」「そうですね。」それからその女性と映画や本の話をした。年も名前もきかなかったが多分私より6つ7つ上くらいだろう。奇麗な人だった。今読んでいる本も今日のような話が書いてあり、お互いに「この世は不思議なことが多いものなんですね、やっぱり。」と、何かが劇的に変わるというわけではないような一日の出来事をふりかえるでもなく話していた。私の方がその女性より先に店を出た。もう会うことはないかもしれない。

彼女が相席をする前、読んでいた本(彼女と私が読んでいたのはポール・オースター著書「トゥルー・ストーリーズ」だった。)のページは「知らない人と話す。」というものだった。
〜前略〜人間同士を引き裂くものがかくも多く、憎しみや不和がかくも蔓延している中で、我々をひとつにしてくれる“ものたち”のことを覚えておくのは悪くない。知らない人と接するうえでそういう“ものたち”から離れぬよう努めれば努めるほど、都市の士気は向上するだろう。

この、「ものたち」は、今日の私にとっても、今までのわたしにとっても〈場所〉というものが当てはまる。
細かく言えばその〈場所〉に在る椅子やテーブルなんかもそうだ。珈琲カップだってそのひとつ。

帰り道、デヴィッドリンチの映画「ブルーベルベット」の中で
サンディが言うセリフを思い出していた。「この世は不思議なところね。」
相手がなんて答えていたかは思い出せなかった。










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posted by 見汐麻衣 at 22:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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